絵に描いた餅を食べる方法
−外伝2−
なんとなくフラクタル
やれやれ…生物学者ってのはどうにもたいへんな仕事だぜ。
本気になって研究しようとするのならだ、数学の勉強は
必須になってくる。
遺伝学をやる上でももちろんなんだけど…ほかに理由があってね。
多くの文献は英語なので英語力も必要だ。
世界中の学者と会話するとなるとほぼ共通語は英語な件。
英語さえ(多少下手でも)話せりゃ、私の経験上、
イギリス人、カナダ人、韓国人、フィンランド人、中国人、
フランス人、アメリカ人と位は会話できた。
(うち前半分は前の職場でお世話になりました。残りの方は
学会とかでお話いたしました)
俺の英語力なんて人並み以下なんですがね、何とか生物学ターム
知ってたのでまだマシだったと思います。
もっと英語力つけないとなぁ…なんで高校時代赤点だった俺が…
そして体力も必要ですよ体力も。生物に対する知識も
分子生物学者もたまにはフィールドワークして外で生き物と
触れ合うべきだと思うんですがどうでしょうか。
もともと数学系、物理学系の生物学者に多いのですが、教授
クラスでもこれだからなぁ…
「線形動物ってどんなの?(ある動物門で寄生生物が含まれてます)」
「これヤゴだろヤゴ」「いいえヘビトンボです」
以上実話だから悲しくなってきます。生物学者って何なんだぜ?
話変わりますが天皇陛下がタヌキの研究について論文を書いて
おられるそうです。
ちなみに秋篠宮殿下は民俗学を生物学的アプローチで捉えた研究を
おこなっています。例えば河童って生物学的には何なのか?とか。
タヌキと河童…どっかでみたなこの取り合わせ。
博物学とか民俗学衰退しまくってて(理由としては効率優先化)俺に
とっても非常に悲しいので、彼らを応援したいですマジに。
皇室などに一銭も出したくない人らから見たら税金の無駄遣いとか
言われそうですが、研究として価値あると思う俺からしたら科研費
獲ってきてもいいと思うよ。(皇室が科研費とってどうするんだよ…)
元々生物学ってのは博物学から来ているので、生き物ってなんなんだ、
というところからスタートしています。見ろ、もっと見ろ!
そんなわけで生物を徹底的に観察する、それが出発点でした。
そういう観察を元に、最初に気がついたのはゲーテだと思うのですが、
「動物の体って、繰り返しになってねぇか!?」
イモムシやムカデ見たら分かりやすいと思うのですが、体節がわかりやすく
分岐しております。海老なんかも分かりやすいですよね。
しかしゲーテの発想はここからがすごい。
「ひょっとして人間含む動物もそうなって出来てないか?」
え?そりゃないだろ、と思ったあなた、まず魚を想像してください。
魚の背骨、同じ形の物が連なってますよね。
人間の背骨だって一個一個が大体同じ形なんですよ。
どうやら全ての動物は「体節」という繰り返し構造から出来ている。
そして、n番目の体節には何かを追加する、そういうプログラム(遺伝子)
から我々の体ってのはできているのです。
そのn番目の体節に異常が発生すると4枚羽のハエとか8本足の蝶とかに
なってしますのです。(奈良の大仏の蝶の像は8本足。マジです。)
ここからはもっと近年、遺伝子研究がもっと進んでからの話ですが、では
われわれの体の内部のように、左右非対称に内蔵が存在する場合はどうなのか?
じつはこれもアクチビンといった左右の決定遺伝子からなるのです。
つまり元々我々も発生初期段階では左右対称に生まれてきた、しかしその
遺伝子の中に内臓の部位の最適化を行うものがあって、それで我々の
形態をとるようになったわけです。
個体発生は系統発生を繰り返す、と述べたのはヘッケルですがどうもそれは
怪しい気がします。むしろ逆なのではないかと。
「繰り返しを行う遺伝子があって、それが体を形成している。さらに
そこに左右を決定する遺伝子などがあってそいつがコントロールしている」
つまり、利用しているプログラムのうち基本コードは一緒なのですが、
そこに別のプログラムが追加されてきたのが生物ではないかと。
植物についても同じことがいえます。
いや、植物の方が分かりやすいかもしれません。
植物の枝の生え方をよく観察すると、特定の法則が見えてきます。
植物の種類によって葉のつき方のルールはずいぶん違います。
多くの植物は互い違いに葉っぱを生やしていますが、ある種の植物
(ヌルデなど)では葉が枝の両側についていたり…
幹から枝が分かれる場合、枝のつき方はかなり数学的に求めることが
可能となります。幹の一番上から根までの特定の比率の位置から枝が生える、
その生えた枝と幹の一番上の区間の特定の比率の位置から枝が…
…などということを繰り返すと、針葉樹みたいなのができたりします。
うーんすげぇぜ等比数列(というより植物)
オウムガイやカタツムリの殻についても似たようなことがいえますね。
あちらも数式で表せるのですが…調べてみたらこんな数式。
θcotb
r =
ae
螺旋を表す数式ですが、なんというシンプルさ。美しい。
生物は本質的に数学的なのです。
だから数学嫌いな人には、実は生物学はあまりお勧めではないです。
遺伝学なんて統計学以外のなんでもないじゃん…
さておき、その数式がどの遺伝子によって決定されているかが分かると、
我々は生物の形を操作できることに…どこのコーディ〇イターだよ。
しかしそうやって操作して生まれた生物を我々は美しいと思えるのかなぁ…?
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